はじめに
山形県最上町の農村に建つ、山並みに溶け込む木造2階建ての2世帯住宅である。
山形県の中でもとりわけ雪が多いこの地域では,雪と寒さに対しての対応が最重要であった。
落雪や雪下ろしの事故の心配があり、無落雪の陸屋根を採用した。木造でも積雪荷重に耐えられるようKES工法という地元の木造会社の独自工法を採用した。また、暖房は基礎下の土中を蓄熱体とする、地中蓄熱暖房を採用し、2階には補助暖房で薪ストーブを設置した。
1階は親世帯の住まいとなっており、段差のないバリアフリーな造りになっている。農村の昔ながらの文化の中では、仏間、床の間、茶の間のタタミの続き間が必須であり、土着の骨董や文化に囲まれた住み方に重きを置いた。南の庭に対して水平な連続性を高めた。
2階は息子世帯の住まいとなっており,全体が見渡せる大きなワンルームとなっている。吹抜けでえぐられた平面形の中に、キッチンテーブルや薪ストーブ、椅子をレイアウトしていくことで、行為による緩やかな場所が生まれてくる。
南北に大きな開口を持つことで,遠くの山並みを眺望する遠距離の水平性を意識した空間となっている。軽やかに浮遊するような感覚になれる場所となっている。
1、2階は大きな吹抜けで繋がっており、上下の生活の接点となっている。また、地中蓄熱暖房の効果を2階にも送る役割も持つ。
それぞれの世帯の領域を保ちながら,軽やかに内で繋がり、外と繋がる伸びやかな住宅である。
外観
南側ファサード。1階は庭に対してテラスを設けた。2階は全面を開口とした。
玄関ホール
南側玄関。雪国であるため風除室を設けた。上階のチャコールグレーの外壁と、白い外壁と、植栽の緑で綺麗なストライプ状の外観となっている
1階 親世帯
1階和室を見る。和室の続き間となっている。右手奥にフローリングのダイニング、さらに奥に寝室がバリアフリーに繋がる。
床の間。仏壇や骨董品など土着な雰囲気を醸し出す空間。
1階は段差のないテラスに繋がる。2階は南側にベランダテラスがある。
2階 子世帯
階段を上がると子世帯の住まいとなる。階段を降りた突き当たりに玄関がある。
北側に収納を帯状に配置している。場所ごとにキッチン、リビング、ワークスペースとなるように家具の造作を変えている。上部にはスリット状に開口があり、奥の山並みが見える。
南側には高さ2.2mの開口がある。遠くの山並みが眺望できる。腰壁が1.1mあるので、家具がレイアウトでき、外部からのプライバシーも守れるようになっている。
2階は一繋がりの大きな空間。天井、壁面収納の連続性から全体的な広がりを感じる。
天井高3.3mの2階。手前からキッチン、リビング、ワークスペースとなっている。吹抜けの奥にベランダがある。
薪ストーブがあるリビングスペース。奥にワークスペースがある。
4.5mの大きなキッチンテーブル。キッチンの奥に水回り、クローゼット、寝室がある。
2階ロフトから全体を見る。吹抜けのヴォイド越しに下階の気配がうかがえる。
水廻りのスペース
2階浴室はマッシロいFRP防水。大きな鏡と窓を連続させた。