宮城県仙台市
木造在来工法 一部RC造
受賞
メディア
- 「LiVES 75号」 2014年6月1日号
- 「Replan 東北」2012年10月20日
仙台市の新しい住宅地に建つ、木造2階建て住宅である。
計画地は、南北を道路、東西両サイドを住宅にはさまれている平行四辺形の変形敷地である。
敷地北側は2.5mほどの高さの擁壁があり、擁壁の下には公共の緑地帯が備わっている。
北側の道路を挟んで向かいにも住宅が建っているが、ほど良く距離が離れている。
なんてことない住宅地でありながら、変形敷地、高低差、緑地帯、 そんなイレギュラーの中にこそ魅力のあるポテンシャルは眠っていると感じている。
プライバシーを保ちながら、外部空間と一体となる住宅を目指した。
リビング棟と子供室(寝室)棟にボリュームを2つに分け、中庭を取る構成とした。
ただ、普通に中庭を取れば、隣地の壁に阻まれた閉じられた部屋のような中庭になる。
そこで、ケーキのカッティングのように、敷地の対角線上に建物を分ける中庭テラスを設けた。
隣地の影響を受けない中庭は、抜群の抜けがあり「みち」のようである。
この抜けのある「みち」は、晴れた時には泉ヶ岳が見え、夏には花火が見える絶好のロケーションである。
余った部分は、結果的に三角形のリビング棟と子供室棟を作り出した。
リビング棟の三角形は、北面緑地と中庭、2面に大きく開き、 さらに中庭を介して子供室とも緩やかに繋がる伸びやかな空間を作る。
また両サイドの住宅にもプライバシーを保ちながら、大きな開口をもうけることも出来た。
北面には2.5mのよう壁が敷地内にあり、 これを北面のファサードに利用し、基壇の上に建物が載ったような見え方とした。
リビングの気配はうかがえるが、天井のみが見えている。 この高低差が、リビングとの距離感を生み、おおらかに開かれたリビングになっている。
建築がこうあるから道のような抜けができたのか/道があるから建築がこうできたのか、 どちらともいえる様な開かれた風の抜ける「みち」の住宅である。
外観・南側
南側外観。
ファサードは窓がなく、ザラザラとした素材感。
周辺の住宅よりも一回り小さい、岩のような見え方。
前面の道路が2又に分かれて敷地の中に侵入することで、建物を▽△(鋭角)に侵食してしまったような建ち方。
または、抜けがある『みち』のようなパブリックな意味を持つ場所があり、その両サイドの▽△の敷地に2棟の住宅を建てたような在り方。
敷地の対角上を中庭テラスとすることで開放的な抜けを得ることができた。
玄関を入ると、中庭テラスに続く階段が見える。
アプローチ。周辺にも2m程度のコンクリートの擁壁があり、アプローチ/テラスの素材はコンクリートとした。
玄関からテラスへ。住宅地でありながら視線が抜ける。
テラスに上がり玄関を見返す。視線が抜ける。
左のリビングダイニング、中庭テラス、右手の子供室が、ダンダンダンとゆるやかに繋がり、 開放的なワンルームのように見える。
子室と繋がる中庭テラス。プランターで植栽を植えたり、バーベキューをしたり、ラフに使える土間コンクリートとした。上部のカラビナにタープを掛けることができる。
北側の敷地に対して高台にあるので、屋根越しに遠くまで眺めが良い。
外観・北側
北側外観
3mの既存擁壁は敷地内にあり、ファサードに兼ねるような見え方。
街路樹が植えられており、リビングの気配がなんとなくわかるような距離感。
リビングは若干跳ね出すことで既存擁壁とファサード面が揃ってみえる。北側開口部は、下部が換気窓で開く。
リビング・ダイニング
玄関からリビングダイニングへ。段々と上がっていく途中にキッチンがある。
リビング・ダイニングから玄関を見る。上にテラスがある。
大きなテーブルがあるリビング・ダイニング。段々と上がっていくとベンチ越しにテラスにいくことができる
パースが効いた▽の奥面(北側)は、緑が広がる景色を眺めることができる。
リビングは△の利点を生かし、中庭に接続する面を大きく得ることができる。
北側の景色を見る面、南側の中庭を使うアクティブな面、収納力がある機能的なの面が△の三辺に当てられている。
▽のリビング・ダイニングの一辺は収納が充実したキッチン壁面になっている。上の余白にはピクチャーレールで絵を飾ることができる
子室
子室からテラス、リビングを見る。階段室にはトップライトがあり中心から明るい。
子室から段々と北側の景色まで繋がり広がりを感じる。
三角形のためテラスと接続する開口面が大きい。
階段室
子室棟の階段室。三角形の芯に階段室を設けることで、ゆるやかに回遊する1~3部屋を作る事ができ、また、トップライトを設けることで1階の採光を取ることができる
下の廊下には水周りが見える。上部はテラスに繋がる。
1階は寝室、クローゼット、書斎。落ち着いた空間。階段室を中心に回遊性のある自由度のある空間。
コーナーに作り付けでテーブル。
水廻りのスペース
中庭テラスの下は水周りが納まっている。 床にタイルを貼り、右手ににトイレ、クローク、左手に洗面、浴室がある。
奥にリビング、玄関がある。
落ち着いたトイレ。
下層でありながら明るい浴室。
夜景
リビング。開口部には木製ブラインドが設けられた。
YOS 八乙女のΔ住宅
所在地:仙台市泉区
主要用途:専用住宅
家族構成:夫婦+子供2人
構造・構法
主体構造:木造
基礎:ベタ基礎(柱状改良にて地盤改良)
規模
敷地面積:182.52㎡
建築面積:90.04㎡
延床面積:120.12㎡
工程
設計期間:2010年11月~2011年 8月
工事期間:2011年 9月~2012年 5月
敷地条件
第1種低層住居専用地域
道路幅員:南6.0m 北6.0
駐車台数:2台
撮影:小関克郎