設計主旨
仙台市内の築30年ほどの集合住宅の1室のリノベーションです。
室内に防火扉があったりと,少し変則的な住戸で,プランを大きく変更することは出来ませんでしたが,素材に注力して設計しました。
リノベーション前/解体工事前の状態
このように,住戸の真ん中に大きく廊下が取られ,各部屋が細切れに確保されていましたが,これらの間仕切り壁を取り外して,大きな部屋にしています。
もともと,「3LDK」の間取りでしたが,「2LDK]に変更した,ということになります。
リノベーション中/解体時
設計も終わり,工務店も決まり,既存を解体して,かなり驚きました…。
もともと「鉄骨鉄筋コンクリート造」という日本独自の特殊構造だということは分かっており,「よくあるマンションのリノベーションのように,コンクリート躯体が奇麗に表れることはない」とは分かっていましたが,それにしても少しイメージが違っていました。
設計時に,天井に小さな穴をあけて状態を確認していたのですが…
天井裏が「デッキプレート」であることは確認していたのですが,開けて見るとこんな感じで…。
鉄骨の梁は耐火被覆でもこもこしているのは分かっていたのですが,控えの斜めの鉄骨部材があったり…,
外周部には不思議な鉄骨部材(左の写真のオレンジ色の部分)があったりと,結構不思議なつくりだったんです…。
それに図面上では,「防火上の区画壁」は鉄筋コンクリート壁の表記になっているのに,実際は不燃のパネルが貼られて防火区画とされていたり…。
解体してみると,結構予想外の展開でした。
既存躯体の素材感が全く想定と違うので,「うまく行くのかなあ」とかなり悩みながら現場を進めました。
しかし,「木毛セメント板を天井に施工」してから,かなり前が見えるようになりました。
木毛板の粗っぽさが「梁の耐火被覆」と合って,かなり雰囲気が統制されることが分かりました。
こんな感じでかなり良いですよね!
さて,では出来上がったものを見てもらいます。
リノベーション後/玄関ホール
玄関を入るとすぐ右に折れます。「視線はそのまま窓の外に向く」構成です。
全体の素材構成は,「床/タイル」「壁/木毛セメント板・モールテックス(左官材料)」「天井/ルーバー」という構成です。
ベンチに使った「集成材の天板」が結構効いています。
リノベーション後/ダイニングキッチン
玄関ホールを突き当り,左に折れると,リビングダイニングです。
左写真/左手に長く窓台を設け,水平ラインを強調しています。
解体した時のもうひとつの悩みが窓が細切れで,「空間全体に伸びやかさがない」ことだったので,それをどう補うか,についての答えです。
天板は,モールテックス(左官工事)
引き出しの面材は木毛セメント板です。
リノベーション後/リビング
リノベーション後/書斎・
この「書斎・廊下」の素材感のコントロールはかなりうまく行ったと思っています。
こういうのって本当に難しいんです…。
リノベーション後/主寝室
リノベーション後/ゲストルーム
リノベーション後/洗面室
ちょっと特殊な左官材料「エクセルジョイント」で仕上げた洗面室です。「エクセルジョイント」は強度を出すために繊維が練り込まれており,それによって仕上げた表面が少し毛羽立っています。
これはこれで不思議なテクスチャでかなり良かったです。