大きな地形を背負う環境住宅(温熱環境データ解析編)

大きな地形を背負う環境住宅(温熱環境データ解析編)

2019-08-28 初出
2019-09-09 「2018-2019冬編」修正

宮城県仙台市太白区

構造

木造二階建て 専用住宅

メディア

受賞

  • 東北住宅大賞2019 奨励賞
  • 第34回振興賞住宅環境設備賞(空気調和・衛生工学会)

これまで『もうすぐ生まれる!』編『もう生まれた!』編で触れたように、この住宅は環境工学の東北大学小林准教授との共同研究という形で、ここまでプロジェクトを進めてきました。
2018年の7月に引き渡しを終え、冬季の計測のため、その年の冬を首を長くして待っていました。

計測のために、「熱電対」という電線を壁の中や床下に仕込んでいます。この電線を「ロガー」という機械に接続すると、何十か所か、一斉に「熱電対」の先端部分の温度が記録され続けます。


下の写真が床下に設置した「ロガー」です。
このロガーは20チャンネルまで記録可能な仕様になっています。

ロガー
ロガー

ロガーに接続されている電線が「熱電対」です。
熱電対は先端を下の写真のように、ハンダ付けすることで、温度が計測できるようになります。こうした熱電対を住宅のあらゆるところに設置しています。

熱電対の設置
熱電対の設置

このロガーにパソコンを接続すると、計測したデータを取りだすことが出来ます。

こうした記録装置は、温熱環境の計測のために設置するものですが、何よりも、計測したデータを元に、この住宅のより良い運用方法を割り出すための大きな武器となります。

採熱室でどの程度の熱が取れ、ファンを回すことでどの程度の熱が移送され、そして床下に設置した「潜熱蓄熱体:PCM」にどの程度蓄熱されているか、或は、室内の各所がどの程度の温度で推移しているか、などなど、様々なことが分かる筈です。

そして更に、どうしても「熱電対」を設置することが出来なかった箇所や、追加して温度の計測をするべき箇所でこれから熱電対を配線することが出来ない箇所については、下の写真のような「おんどとり」を設置しました。
「おんどとり」は屋外にも設置しています。

日照計
おんどとり

またこのほかに「日照計」の設置も準備していましたが、うまく外部に設置することが出来ず、断念しました。
しかし、仙台気象台がすぐ近くの山の頂にあり、そこでの日照時間がほぼここに当て嵌まる筈です。

下の図面は、その熱電対の設置個所やチャンネル番号をメモしたものです。

図面
熱電対の設置個所やチャンネル番号をメモ

その上、この住宅に設置した暖房機器と「クロスフローファン(採熱室からダイニング床下に暖気を送り込むためのファン)」のオンオフを、下のような表に、記録してもらうようにクライアントにお願いしました。
これはかなりアナログなやり方ですね。

記録
暖房器具とクロスフローファンのスイッチONOFF表

さて、こうしてこれらのツールを活用して、この住宅の最適な運転方法を探ってゆくことになります。


最初の正月休み

2018年12月11日

花沢がクライアント宅にお邪魔し、計測機器の設置や調査について説明を行いました。

2018年12月25日

2018年の12月の年末年始休暇の直前12月25日に、小林先生と共に、クライアント宅にお邪魔し、機器の設置等を行いました。
理由としては、忙しさにかまけてしまい、年末ぎりぎりになってしまったことと、もうひとつは、年末年始にクライアントが帰省することを受け、不在時(暖房等を一切ONしない状況)のデータを取っておくことで、生活時のデータと比較して何か重要なことが見えてくるのではないかと考えたことでした。

このように、熱電対をロガーに接続し…、

熱電対をロガーに接続
熱電対をロガーに接続

いろいろな箇所に、「おんどとり」を設置してゆきます。

おんどとり設置
おんどとり設置

2019年02月01日

データ回収。
冬の最も厳しい時期のデータを採取した筈でしたが…、
ひとつ残念だったことは、年末年始の時期にクライアントが帰省し無人状態のデータが取れる筈だったのが、子どもさんが体調を崩し予定を変更し帰省をしなかったとのことで、そういう種類のデータは入手できませんでした。
回収したデータを見てみると、採熱室では十分な熱が取れているにも拘らず、「『PCMを設置した床下の温度』が、思ったよりも上がっておらず、予想とかけ離れている!」ことが最初の話題となりました。

すこし、悩んでしまいましたが、

まず最初に考えたのが、「採熱室から床下に熱を移送するダクト経路から、空気が漏れており十分な熱が床下に送り込まれていないのではないか」ということでした。

2019年02月05日

早速、花沢が、風速計で、床下のファン吹き出し口付近の風速を図ってみたところ…、

風速計

…1.2[m/S]から、1.4、1.7[m/S]程度の風は送られてきていました。
…ということは、
(ある程度以上には)ファンは正常に作動しており、採熱室の熱はちゃんと床下に移送されていることが分かりました。

2019年02月07日

小林研究室での打ち合わせを行いました…。
また、小林先生のアドバイスによって、熱電対の設置個所を増やすことにしました。
この時点では、床下の熱電対は、床の底面に設置していましたが、小林先生によれば、これでは、正確な温度データが取れていないのではないか、とのことでした。
これに追加して、「潜熱蓄熱体 PCM」の直上と直下に熱電対を設置することになりました。
(…結果として、これによって、正確な床下の温度データとPCMの温度データが取れることになります。)

また、「採熱室の熱はちゃんと床下に移送されている」のであれば、その熱はどこかにある筈なので、床下の調査ポイントをさらに増やすことになりました。
更には、室内の空気の循環を考えると、「ダイニングキッチンから採熱室の間のドアガラリ」付近が、「ダイニングキッチンからの空気の出口」であり、「最も室温に近い温度データが取れるのではないか」ということになり、そこにも調査ポイントをふやすことになりました。

2019年02月09日

花沢による設置作業。 
床下の調査点数を10チャンネル増設しました。

2019年02月22日

データ回収。
ようやく、ここで、ひと冬のデータが揃いました。 


2018・2019年冬のデータ解析

集まったデータは膨大で、未整理であり、どのように整理するかが大きな課題となりました。

先ず、手元にあるデータとして、「住宅内外の各ポイントの温度データ」があります。
(下の写真はその一部です。この範囲で2月1日の15時15分から19時40分までしか表示されていないので、全体ではこの何十倍のデータ量があります…。泣)

住宅内外の各ポイントの温度データ

全部で30か所のポイントの温度データが、この期間(12月25日~2月22日)5分おきに記録されています。これだとデータが多すぎるので、1時間おきのデータに整理しました。
また、「BURNOUT」と表記されているところは、何らかの事情で、熱電対からのデータが取得できなくなっており、その地点のデータも使うことが出来ず、比較する際にはそこにも注意をしなければいけません。(継続的な比較が出来ないので…。)

次いで、クライアントに記録してもらった「暖房器具とクロスフローファンのスイッチONOFF表」があります。これはこちらで作成した紙を渡し、それに手書きで記入してもらっていましたが、
それを「仙台気象台の日ごとの気象データ」と統合し、見やすく整理しました。

2019年1月の表

上の表は、2019年1月の表です。
表の左側に気象台のデータ(気圧・降水量・気温・湿度・風向風速・日照時間)を掲載し、左の欄に「機器のスイッチのオンオフ表」を付けています。当然のことながら、1日のうちに何度もオンオフを繰り返すこともあり、その都度その時間を記載しています。
また、「黄色くマーカーした欄」については、オンオフの記録忘れ等で、記録の信頼性が少し怪しい部分をマークしたものです。(多少疑わしい箇所があるデータについては、信用しすぎないように注意しています…。)

そしてもうひとつ、最も必要な指標として「クライアントへの聞き取り」があります。
これについては「快適性についての定量的なデータ」とは言い難いかもしれないですが、しかし、一方では最も重要で、信頼性の高い指標であるともいえます。

冬季に関して、クライアントから頂いたコメントを箇条書きにしてみます。

これらの資料から何をどう読み解いてよいのか、最初はよく分かっておらず、途方に暮れていました。

そう言ってばかりでも仕方が無いので、少しづつデータを整理し、何と何を比較すればよいのかを考え始めました。

そう思いながら数日間データとにらめっこをしていましたが、考え始めるとこれはこれで面白いものです。そんな中で、まず最初に思い付いたのは、(いま思うと当然ですが、)採熱室を設けてその効果を検証しようとしているので、日照時間の多い日どうしを比較し、その中で、使い方の違う日があれば、それによって、使い方による効果が比較できるのではないか、ということでした。

まあ、思い付いてみると当たり前ですね。苦笑
しかし、そんなことを思いつくのに、何日も掛かってしまいました…。

そういったことを考えながら、データを眺めてみると、
ひとつ目は、1月12日の気象データを見ると、日照時間がほぼゼロ時間であることに気が付きました。


01月12日

また、この日は、ルームヒーターを付けている時間が短く、ヒーターの暖房による影響がない場合に、どういった室内環境になっているかが把握できます。(表上部のオレンジ色の部分がスイッチを付けた時間を表しています。)この日は、朝の8時50分から12時までしかスイッチを入れていません。
もうひとつ、この日はクロスフローファン(採熱室から熱を移送するファン)のスイッチを入れていません…。

水色の一番下の線が外気温を示していますが、マイナス1度からプラス5度くらいを推移しています。(仙台気象台のデータではなく、敷地内に設置した「おんどとり」によるデータです。)

この日は、日照時間が僅か0.7時間であるために、
日中の採熱室の温度(紫色の線)もたいして上がっていません。(15度から20度を推移)
また、ダイニングルームの室温も15度から18度を推移しています。

「これだけで十分に暖かい」とは言えませんが、外気温が低さと、ほぼ無暖房であること考えればまあまあの性能だと思います。

次いで、今回の検証に大きなカギになるデータを見つけました。
これを見つけた時には本当に嬉しかったです。
本音を言えば、ただ膨大なだけのデータを目の前にして、「これだけ膨大じゃあ、何を見てどこから手を付けて良いか分からないし、逆になにひとつ分からないかもなあ」と半分肩を落としていました。

人が生活しているのですから当たり前なのですが、当然のことながら「寒ければ暖房をつけ、暑ければ窓を開け…」というように、快適さを求めて小さな工夫やスイッチ操作をしながら暮らしています。なのでなかなか、実験室でのような分かり易いデータを見つけるのが難しいのです。
そんな状況の中で、この住宅の持つ性能や、外気温と室内環境の間での正確な規則性を見つけることは、本当に難しいのです…。

しかしようやく、大きな手掛かりを見つけました!


02月16日

2月16日の仙台気象台のデータによると、「日照時間6.9時間(仙台の2月の平均日照時間は5.42時間)」と長く、その上「気象台平均気温:3.0度/ MAX:9.0 / Min:-1.7」と寒さという意味でも、仙台では十分な寒さだと言える数値が出ています。

また、更に素晴らしいことに、表上の「スイッチオンオフ表」をみると、ダイニングのヒーターは「20時08分~20時20分までしか稼働しておらず、クロスフローファンは回っていません…。

解説

  • 一番下の青線
    敷地内日陰の外気温。
  • 一番上の紫線
    採熱室の上部の温度。早朝の13度から、得た日照によって順調に上昇し、15時頃には52度まで上昇している。
  • その下の赤線
    ダイニングの代表的な室温。無暖房状態のこの日、朝7時頃には14度くらいまで低下する(外気温マイナス2度)ものの、日照時間が延びるにしたがって順調に上がり、15時には27度まで上がり、その後緩やかに下降している。20時に20度まで下降を続けたが、ここでルームヒーターのスイッチを入れたため、23度まで上昇し、スイッチをオフにすると共もに再度下降している。その後、24時で18度(外気温3度)まで下降。

→これらの温度データは、基本的に、外気温の変動に従って、非常にきれいな曲線を描いています。(まるで富士山のように雄大で自然な曲線です…)この住宅の室温が、日照によって大きく影響を受け、ゆったりとしたカーブを描いていることが分かります。

しかし、上の表の中で、その温度変化に従っていない点が幾つか発見できました。
それが、ダイニングの床面(座面)に設置した、PCM周囲の温度変化です。

解説

  • 濃い赤色の線
    「潜熱蓄熱体(PCM)の下面」の温度。他のポイントの温度変化と比べ非常に緩やかに、そして、他の温度変化に少し遅れて、推移しています。夜中の0時には20度くらいでしたが、(室温が朝7時を下限に上昇し始めているにも拘らず)昼の11時12時頃の「15度」まで緩やかに下降し、その後緩やかに上昇し、23時頃の「19度」までゆっくりと上がり続けています。
    こうしてみると、PCMが室温の変化にかなり抵抗していることが分かります。ただ、『この「PCMの抵抗」がどの程度室温に影響を与えているか』については、残念ながら検証方法を見つけることが出来ていません…。
  • 濃い抹茶色の線
    PCM上面の温度。基本的には「潜熱蓄熱体(PCM)の下面の温度」と同じような温度推移をしていますが、温度が下降する時には「PCM下面」の方が温度が高く、下降する段階では、「PCM上面」の方が温度が高い傾向があります。
    →これには何となく、PCMの吸熱の段階と放熱の段階が温度に表れているのではないかと思いました。

日照が十分にあり、外気温が低く、ひとによる環境コントロールがほぼない」状況のデータを見つけることが出来たお陰で、この住宅の「ある理想的な条件下での性能・温度推移」が把握でき、これと比較することによって、最適なクロスフローファンの運転方法などを検証することが出来そうです。

続いて、次のデータを見ると…


02月18日

外気温は少し高いものの、この日も「日照時間が7.8時間」と長く、「2月16日」のデータと比較することにより、様々なことが分かってきます。

解説

  • リビングとダイニングのルームヒーター
    それぞれ「6時45分~9時20分まで稼働させている。(仕事部屋以外はそれ以外の熱は与えていない)
  • クロスフローファン
    13時50分から19時まで稼働
    →この日のデータの最大の「魅力」は、午後からクロスフローファンを稼働させ、採熱室から居室(ダイニング)に熱を移送していることです。しかも、その間に暖房器具の稼働が無い!

これを気候条件の似た「2月16日」のデータと比較することにより、(「2月16日」のデータにより、クロスフローファンが稼働していない場合の室温の変化が予想できるので)クロスフローファンの効果を検証することが出来そうです。

さて、では、その温度変化を見てみると…。
午前中は暖房を稼働させているため、10時以降の温度変化だけを見てみます。…

解説

  • 一番下の青線
    敷地内日陰の外気温。
  • 一番上の紫線
    採熱室の上部の温度。日照による取得熱により順調に上昇し、13時頃までは順調に上昇しています。「2月16日のデータによれば、このまま上昇し15時には52度まで上昇する…」と思いきや、(クロスフローファンを稼働させた直後の)14時のデータは急に折れ曲がって46度程度にとどまっています。
  • 一番薄いの水色線
    クロスフローファンのすぐ手前の温度です。クロスフローファンを稼働させると、すぐに採熱室の熱が、移動していることが分かります。
  • その下の赤線
    ダイニングの代表的な室温。これも14時から少々不自然な線を描いて上昇しています。15時頃には35度まで上がり、クロスフローファンをオフした19時に27度、20時にも27度のままで、その後ゆっくりと下降し、24時に22度まで下がっています。
  • 濃い赤色の線
    「潜熱蓄熱体(PCM)の下面」の温度。PCM下面の温度は、14時以降少し急に上昇し29度程度まで上がるが、緩やかに下降しはじめ、24時に25度まで落ちています…。
  • 濃い抹茶色の線
    PCM上面の温度。PCM上面の温度は、14時以降ゆるやかに上昇し、20時に25度まで上昇し、24時までその温度を維持しています。

→13時50分にクロスフローファンを稼働させた効果がここに表れています。
クロスフローファンを稼働させると、採熱室の温度が下がり、ダクト内の温度が急に上がり、PCM周囲の温度を上昇させ、更には、室温を上昇させています。その後、採熱室、ダイニングルーム等の室温は深夜に近づくにしたがって平準化され、24時頃の各部の温度は22度~25度に収束しています。


02月21日

この日は、少々平均気温が高いものの、日照時間が長く、前の例との比較が出来そうです。

解説

  • ダイニングのルームヒーター
    朝の7時00分~9時05分まで稼働させている。
    (仕事部屋以外はそれ以外の熱は与えていない)
  • クロスフローファン
    16時12分から21時54分まで稼働

この日のデータも、その間に暖房器具の稼働が無く、夕方にクロスフローファンのみが稼働しています。

午前中は暖房を稼働させているため、10時以降の温度変化だけを見てみます。…

解説

  • 一番下の青線
    敷地内日陰の外気温。
  • 一番上の紫線
    採熱室の上部の温度。15時に56度まで上がり、その後16時に緩やかに下降していますが、その後クロスフローファンを稼働させたため、17時以降は急に温度が下がっています。
  • 一番薄い水色の線
    クロスフローファンのすぐ手前の温度。16時過ぎにクロスフローファンを稼働させると、すぐに採熱室の熱が移動し、温度が上がっています。
  • その下の赤線
    ダイニングの代表的な室温。15時頃には35度まで上がり、クロスフローファンをオンした16時過ぎに30度、その後ゆっくりと下降し、24時に21度まで下がっています。また、クロスフローファンをオフにした直後に、少し急に室温が低下しています。クロスフローファンが、PCMに蓄わえた熱の放熱にも役立っていることが推測されます。
  • 濃い赤色の線
    「潜熱蓄熱体(PCM)の下面」の温度。PCM下面の温度は、17時以降急に上昇し25度程度まで上がるが、緩やかに下降しはじめ、24時に24度に落ちています…。
  • 濃い抹茶色の線
    PCM上面の温度。PCM上面の温度は、朝からずとっとゆるやかに上昇し、21時に25度まで上昇し、24時までその温度を維持しています。

こうして、データを追ってゆくと、冬季の運転について、幾つかのことが見えてきました。

日照時間が長い日については、

更にもうひとつ。
ダイニングルームの室温数値が、「晴天時の日中に、35度程度にまで上がっている」ことについて気になっていますが、クライアントによると、「体感としてはそんなに温度が上がっているという実感がない」そうです。(Tシャツでも過ごせるくらいに暖かいが、「真夏の暑さ」という感じではない。)
もしかすると、計測点として何らかの課題があり、体感温度と異なったデータを拾っている可能性があるようです。

「ダイニングルームの温度」については、どのポイントを代表的な数値として取り上げるかが悩ましいのですが、現在は、「採熱室とダイニングの間のドアガラリ付近」としています。クロスフローファンを稼働させた際に最終的に採熱室に戻る空気の温度が最適だろうと考えてのことでしたが、少し何かの問題があるのかもしれません…。
その他には「足元ガラリ」の温度も採取しています。これは、着座した際に体に近く体感温度に近い温度だと思われますが、ファンから出た空気の温度を拾いすぎている可能性がもあります。

…これについては、課題として積み残し、次の冬に再度検討します。


「日照時間の多い日」については、何となく運転方法が見えてきました。しかし、そんな日が冬に数日しか無ければ、あまり意味がありません…。

では、「どの程度の日照があれば有効な暖房として機能」し、「そんな日はどれくらいの頻度で分布しているのか?」について…考えてみます。
その後、「その他の日はどうするのか?」についても考えます。

2019年2月の日照時間の分布

日照時間5時間以上の日数18日
日照時間4時間以上5時間未満の日数5日
日照時間1時間以上4時間未満の日数0日
日照時間1時間未満の日数5日

2019年1月の日照時間の分布

日照時間5時間以上の日数20日
日照時間4時間以上5時間未満の日数3日
日照時間1時間以上4時間未満の日数7日
日照時間1時間未満の日数1日

2018年12月の日照時間の分布

日照時間5時間以上の日数13日
日照時間4時間以上5時間未満の日数6日
日照時間1時間以上4時間未満の日数9日
日照時間1時間未満の日数3日

先ずは、「日照時間ごとに、どの程度まで採熱で来ているか」を知る必要があります。

仙台気象台のデータデータから、日照時間ごとに幾つかのサンプル日を抽出しました。
その日毎に採熱室上部の温度がどの程度まで上がっているのかを調べてみます。それによって、「どの程度の採熱が出来ているか」の参考値にしたいと考えました。

2019年

日照時間採熱室温度
0.0時間(02月09日)19.03度(15時20分)
0.0時間(02月19日)21.13度(13時35分)
0.7時間(01月12日)20.34度(11時34分)
2.5時間(01月27日)46.24度(14時54分)
3.0時間(01月10日)26.16度(14時34分)
3.4時間(01月08日)27.32度(10時29分)
3.7時間(01月07日)30.72度(13時49分)
4.2時間(02月14日)43.59度(14時30分)
4.5時間(01月02日)37.57度(13時29分)
4.6時間(02月10日)36.20度(14時45分)
4.8時間(02月03日)40.89度(12時35分)
5.5時間(01月09日)49.11度(14時24分)
5.7時間(01月01日)50.90度(13時59分)
5.7時間(02月15日)45.47度(15時50分)
5.8時間(02月12日)48.26度(14時10分)

こうしてみると、日照時間が短い場合には、「何時に日が出ているか」によって、採熱室の温度にはバラツキがあるものの、日照時間4時間程度で採熱室は40度前後まで上昇し、日照時間5時間以上で採熱室は45度以上になっていることが分かります。
もちろん外気温によっても、日照時間によってどの程度の室温が確保できるかは左右されますが、変数が多くなっても推論が立てづらくなるため、あくまで日照時間のみでの比較としています。

凡そ、この数値を目安に、「採熱室が何度程度になれば、暖房として有効か」を突き止めれば、この住宅の運転方法は更にイメージが付きやすくなります

その前に…、
先ずは、日照時間別に分けると、どれくらいの分布になっているかを数えてみました。

2019年2月の日照時間の分布

日照時間5時間以上の日数18日
日照時間4時間以上5時間未満の日数5日
日照時間1時間以上4時間未満の日数0日
日照時間1時間未満の日数5日

2019年1月の日照時間の分布

日照時間5時間以上の日数20日
日照時間4時間以上5時間未満の日数3日
日照時間1時間以上4時間未満の日数7日
日照時間1時間未満の日数1日

2018年12月の日照時間の分布

日照時間5時間以上の日数13日
日照時間4時間以上5時間未満の日数6日
日照時間1時間以上4時間未満の日数9日
日照時間1時間未満の日数3日

こう見ると、感覚的には、ひと冬のうち、2/3程度の日数は、取得した熱を有効に使え、うまく運転すれば他の暖房を使わなくても過ごせそうな気がします。
ここではまだ断言できませんが、こうした推論の上に、次回の冬での運転方法を組み立て、推論に基づいた運転による測定結果を検証すれば、更に精度の高い運転方法が見つかる筈です。

と、ここまでを、この「2018-2019冬 データ検証」の結論とし、次の冬での検証結果を待っても良いのですが、残りの幾つかのデータも掲載しておきます。

少しづつ、その「(有効な日照時間と有効でない日照時間の)際」の状況に迫ってゆければと思います。
そこに明快なその境目があるのか?、についても疑問ですが…。

…日照時間4時間前後の時の室温状況を、参加に掲載しておきます。。


02月14日

平均気温が「-0.2度」と、仙台ではかなり寒い日です。

解説

  • ダイニングのルームヒーター
    朝の時間帯7時00分~9時33分、と、夕方16時22分~21時27分まで稼働させている。(仕事部屋以外はそれ以外の熱は与えていない)
  • クロスフローファン
    16時22分から21時27分まで稼働

解説

  • 一番下の青線
    敷地内日陰の外気温。かなり寒いですね…。
  • 一番上の紫線
    採熱室の上部の温度。15時に43度まで上がり、その後16時に緩やかに下降しています。
  • 一番薄い水色の線
    クロスフローファンのすぐ手前の温度。16時過ぎにクロスフローファンを稼働させると、すぐに採熱室の熱が移動し、17時以降には、採熱室と同じ温度になっています。
  • その下の赤線
    ダイニングの代表的な室温。クロスフローファンをオンした16時過ぎに32度、その後がくんと下降し、18時には23度となり、21時までそのままの状態で、その後、24時に20度までゆっくりと下がっています。
  • 濃い赤色の線
    「潜熱蓄熱体(PCM)の下面」の温度。PCM下面の温度は、17時以降ゆるく上昇し23度程度まで上がりますが、そのまま、24時にも23度です…。
  • 濃い抹茶色の線
    PCM上面の温度。PCM上面の温度は、朝からずとっとゆるやかに上昇し、(昼間は20度のまま)21時に23度まで上昇し、24時までその温度を維持しています。

こうしてみてみると、「赤線:ダイニングの代表的な室温」としているものが、若干体感温度とズレている気がするので、他の指標も加えてみたいと思います。

解説

  • オレンジ色の線
    テーブル下の足元のガラリ付近の温度。先ほども触れたように、これが着座した際の体感温度に近いと思われます。(朝、暖房をオンにしたさいにあまり温度が上がっていないのが気になりますが…)朝6時に17度くらいまで上がっている温度が、朝11時頃には19度くらいまで上昇し、12時から16時までは20度を維持し、16時過ぎに暖房とクロスフローファンを稼働させると、24度程度まで上がり、21時過ぎにそれらをオフにするまで、その温度を維持しています。

次いで、日照時間が一日を通して「0時間」という日がありましたので、それもまとめてみました。平均気温が5.2度と少し高めですが、日照がない際の室温の推移が見れます。

続いて、せっかくなので、あま「どうという筋道も見つけられなかった日のデータ」も出しておきます。

次の2月12日は、平均気温が0.5度と仙台ではかなり寒い日ですが、朝7時頃から11時まで、夕方16時20分から2時まで、ダイニングとリビングの暖房をつけています。


02月12日

ただ、この日は日照時間が比較的長かったので(5.8時間)、採熱室の温度は47度程度まで上昇しています。いつものパターンでは15時にピークを迎える筈ですので、ちょうどこの時間に日が陰ってしまったものと思われます。
夕方から夜に掛けて、暖房を稼働させていますが、PCMの温度は23度程度あるので、もしかするとクロスフローファンを回すと、その放熱で室温が上がったかも知れません…。

次の2月11日も平均気温1.6度と、仙台ではかなり寒い一日です。


02月11日

この日は、朝9時17分から夜21時17分まで継続してダイニングの暖房を稼働させています。そのお陰で外気温が低いにもかかわらず、室温は高めに維持されています。

ただ、16時にクロスフローファンを稼働させると、採熱室の温度がぐんと下がり、その代わりに各部の室温とPCM周囲の温度が急に上がっています。21時頃には、ダイニングの室温と採熱室の温度、PCM周囲の温度が同じくらい(24度)になっていますので、PCMの効果・影響が、ダイニングに波及していると見れると思います。

その後21時に暖房はすべてオフになりますが、22時36分まで稼働させたクロスフローファンの効果もあってか、24時でも23度を維持しています。


2019夏のデータ解析

…つづく

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