みなさまにクラウドファンディングをお願いしていた「風をつなぎ、森をめぐるヴィラ」のカフェプロジェクトが進捗しています。
正式名称:あいの実西田中COCOON EAST
当初は,「草屋根」を用いたカフェを設計していましたが,建築資材高騰でまったくコストが合わなくなってしまい,がさっと設計変更を行いました。
目次
草屋根の事例(参考ページ:日本植木協会)
「草屋根案」については,残念ながら断念しました…。
新しい案/「風をつなぐカフェ」
先週,クライアントにプレゼンして了承を得た「カフェの新案」です。カフェと言いつつ,小さな売店的空間です。
スタディの様子 /「風をつなぐカフェ」
クラウドファンディングが終了し,急遽再スタートが決まったので,大急ぎでスタディ作業を始めました。このスタディ前の段階の模型(草屋根案)は割愛します…。悲しいので。
また,コストに合わせることを最優先に,コスト的に収まりそうなシンプルな外形(建物の外側の形)を決め,その中で何ができるか,どう魅力を出すかをスタディしています。
2023-04-04案
この案は,草屋根案の特徴を多く受け継いでいる案です。(というか,草屋根案の屋根をぶった切ってます)
この太い梁が地面すれすれまで延び,その上に草屋根を架ける計画でした。地面と屋根が一体となった案でした。
この時までは,木組みを表して,力強さをデザインしようと考えていました。
2023-04-05案
次いで,まずはこの「梁現し」をやめようと考えました。変な話ですが,天井が無いだけ「梁現し」の方が安そうに思えると思いますが,「梁現し」の方がたぶん値段は高いんです。
内部は木毛セメント板を素地のまま貼るつもりでいました。
平面プランについては,当初から,真ん中にはカウンターを設置して,片側にスタッフさんたちのエリア,もう片側にお客さんのエリアとしています。上の右の模型写真で言うと,真ん中のカウンターから右がスタッフのエリアで,左側がお客さんのエリアです。
当初は,コンクリートの基礎を立ち上げて,上部の木構造と下部のコンクリート部分を整理しようと考えていました。
また,木造の場合,「構造壁をどう確保するか」がデザイン上のポイントになるのですが,この建物の場合,「筒方向(上の右の模型写真で言うと,奥行方向)」の壁は十分に確保できそうですが,「筒方向の直交方向(上の右の模型写真で言うと,左右方向)」の壁をどうするかが最大の課題でした。この時まで,カウンター上に巾600㎜の壁を作り,それで構造耐力を確保しようと考えていました。しかし,それがどう考えても邪魔に思えてきていました。
2023-04-07案
このスタディ模型では,構造耐力の確保を,耐力壁でなく筋交いで撮ることを模索しました。また,筋交いの位置を変更しガラス面に移動しています。
しかし,まだ,カウンターはコンクリート基礎のままですね。しかし,少しづつスッキリしてきました
2023-04-11-①案
さて,これまでのスタディ模型では,商品展示のために必ず必要になる「壁際の棚板」を省略して模型を作っていましたが,検討の解像度が上がって来たので,そういった要素も視野に入れて検討を進めることにしました。
2023-04-11-②案
次第に真ん中のカウンターが邪魔なような気がして,構成を考え直しています。これまでは「下部のコンクリート基礎と上の木構造」という図式に組み込もうと考えていましたが,別の要素として考えた方が良いような気がしてきました。
このスタディ模型では,スタイロフォーム(青い部分/通常は断熱材といて使いますが,模型材料としてもポピュラーなんです)で,ボリュームを置いています。
2023-04-13-①案
今度はそれのカウンターを,木でつくろうという案です。概ねこれで良いという話になり,壁際の棚もこのように高さを揃えて設置することにしました。こうすると,ここにエアコンや換気扇といった設備機器も隠せそうです。
これだけシンプルなつくりにすると,そういったことがかなり気になってしまうものです。
また,スタッフエリアの中が丸見えだと,(竣工時はきれいでも)実際にはきれいに使いづらいのではないかと気になって来て,スィングドアの取り付けも検討しました。出来るだけ透明感を確保したいところですが,これくらいであれば気にならないような気がします。
また,これまではカウンターの両端に構造耐力壁を設けていたため,柱の割付はそれに従って決められていました。しかし,柱の割付が束縛を受けなくなったので,まずは3等分にしていました。
2023-04-13-②案
この案では,カウンターの収納能力確保ため,カウンターの幅を広げています。
これはこれで良いですよね。
また,カウンターの「筒感」を出すために,カガミを使ったデティールを考え始めています。
2023-04-18案
柱の割付を変更しました。前の模型と見比べながら慎重に決めて行きます。こっちのほうがシンプルでおおらかですよね。
と,ここまで来て,クラアントにプレゼンしました。このままどんどん進もうということになりました。こうした模型が現実の建物にグレードアップできるよう,厨房機器や設備機器などを組み込んだ検討をどんどん進めていきます。
同時進行的に外壁色の検討
こうしたつくり方の検討と並行して,外壁の検討も同時進行的に進めています。今回は予算的に「ガルバリウム鋼板」一択なので,その色をどうするか,の検討です。
上から,白,シルバー,グレー,赤銅色,…
外から見た外観と,室内(生活介護室)を見比べながら,どれが良さそうか絞り込んでいきます。
まとめ/スタディ作業とは
模型スタディでは,こうして前後の模型を比較しつつ,「実証的にどちらがどう良いか」を見比べながら作業を進めていきます。すごく地味な作業ですが,こうした地道な労力を割くか割かないかで,建物の出来は大きく変わってきます。
どうか,皆さんに喜んでもらえますように!