DIK 囲い庭に埋もれる平屋

設計を始める前

敷地条件:仙台市中心部にほど近い静かな住宅地である。敷地周囲は、古い平屋の借家が並んでおり、敷地は正方形に近い四角形であり、東側は4m幅の私道に接している。南側は2階建ての住宅が建っているが、これはクライアントの実家である。西側は広い空き地がひろがっており、諸々の条件により、しばらくはこのままの状態であろう、とのこと。北側は現在駐車場として使用されているが、遠くない将来には建物が建つことが予想される。ここに計画するのは、「ご夫婦と、その5歳になる男の子」のための住宅である。

DIK-fig-01(敷地模型1/100)
DIK-fig-01(敷地模型1/100)

写真手前が北側、向こうが南


配置計画の検討

先ず考えたこと。『町並みの中に埋もれる感じ』

敷地をひと通り見渡し、事務所に持ち帰り、敷地模型の準備をして打合せを始めた。当初から念頭にあったのは「周囲の雰囲気に引きずられすぎないような配置計画」であった。最初はまわりからぐっと距離をとった感じで2階建てや3階建ての細長い住宅も考えにあった。そうしておいて、上階から周囲の眺望を得ようという案である。

打合せを始めると最初に、担当者から、「低く、町並みの中にそっと埋もれている感じがいいとおもう」との意見が出た。「周囲の住宅が古い平屋の借家なので、それらから突出し過ぎず、また、まわりから、きちんと距離を置いたかたちで……、そっと、まわりの邪魔もしないし、まわりに邪魔もされない感じで……」

そうして、低く頭を引っ込めたかたちの、低層の住宅でのスタディが始まった。


この町並みの中に住宅をどう埋め込むか

DIK-fig-02(ボリューム模型1/100)
DIK-fig-02(ボリューム模型1/100)

写真奥の2つの模型は複雑すぎる構成になりそうな予感がし、真っ先に候補からはずされた。
手前に並ぶのが「単純な平屋中庭型」のボリューム模型の中の幾つか。最終的に選択したものはこの中に含まれていない。

「低層の(平屋の)住宅」という方向に進路をとったことで、なんとなく『中庭型』の住宅になるだろうというイメージはあった。『何か、生活の拠りどころとなる外部空間を確保したい』ということが、いつものわたしたちの基本方針であるが、低層の住宅で、大きく外部空間を取り入れようとすれば、中庭を設けるしか方法を思いつかなかったのである。

しかし、この単純な平屋の住宅でさえも、いざ手をつけてみると、そのバリエーションは幾らでもあった。

最初に手をつけたのが、右写真(DIK-fig-02)上に並ぶ二つの模型である。特に右のものに顕著に反映されているが、無機的な外観にたった一つだけ口が開いており、そこを入るとそのレベル並びにその下のレベルに「外部と切り離された住宅の内部空間」が展開しているといったものである。わたしたちは出来上がったスタディ模型を眺め見て、構成が複雑すぎはしないかと考え、すぐに路線を変更した。そうして取り掛かったのがその下に並ぶ単純な模型たちである。

今になって振り返ると、「現在の案」のコンセプトの半分は、上の二つの模型にすでに息づいている。しかしわたしたちはそのことに全く気付かずにこのアイデアを切り捨て、次の作業に取り掛かっていたのである。

DIK-fig-03(ボリューム模型1/100)
DIK-fig-03(ボリューム模型1/100)

気持ちを切り替えたわたしたちは、とにかくシンプルであることを心掛け、複雑さを排除することのみに心を砕いてスタディ模型を量産した。右下の写真(DIK-fig-03)はこのスタディの作業をひと段落付けたときの写真である。敷地模型の中に設置してあるのが「一番単純だ」と思えた模型。


生活に密着した中庭・手に触れることの出来る中庭

DIK-fig-04(ボリューム模型1/100)
DIK-fig-04(ボリューム模型1/100)

南側(写真向こう側)に「主たる庭」、北側に裏庭を設け、その真ん中に内部空間を設けている。(分かり易いように北側の塀を取り払っている)

先ほども触れたが、多くのバリエーションの中から、ひとつの模型を選ぶに当たって、わたしたちが重要視したことは「一番シンプルな(簡単な)形であること」と「生活にダイレクトに入り込んでくる率直な中庭であること」であった。

最初の段階で、生活空間をまわりの景色から切り離して成立させようとする「中庭型」を選択したため、その分、普通の住宅よりももっと直接的に生活と庭が結びついているような住宅を考えていた。

わたしたちはやはり一番単純なものを選択した。

DIK-fig-05(ボリューム模型1/100)
DIK-fig-05(ボリューム模型1/100)

(分かり易いように北側の塀を取り払っている)

南側に主たる庭を確保し、北側に裏庭を配置する。それらの庭は、『建物と一体化した塀』によってぐるりと囲われ、内部空間と一緒になってひとつの箱庭を形成している。当然、中庭と内部空間の間の境界は出来るだけ曖昧に溶け込むように最大限の工夫をする。『建物と一体化した塀』によって一度大きく区切っているからこそ、よりはっきりと内部空間と中庭が一緒になった「ひとつの箱庭」が意識されるのではないかと考えた。


『路地のようなエントランス』と『居室の中に箱状に配置したバックヤード』

DIK-fig-06(ボリューム模型1/100)
DIK-fig-06(ボリューム模型1/100)

手前側が筒状のエントランス空間。
建物の右下の開口がエントランス。
反対側の駐車場にダイレクトに通じてある。
駐車場は南側の母屋(写真左上)との間に確保してある。

こうして、内部空間の大まかなイメージは固まっていったが、その生活を支える「バックヤード」については未だ白紙の状態だった。ここまででイメージしているようなオープンな内部空間を成立させるためには、バックヤードの確保の仕方についてこそ、真面目に取り組まなくてはならない。前項の下の写真(DIK-fig-05)の時点では、なんとなく、そうした裏方の空間は邪魔にならないように壁に寄せておくべきだと考え、その部分に厚みを持たせてある。最初の時点では、その程度のアイデアしかなかったのである。

また、この居住空間に入る為のプロセスについても、わたしたちは頭を悩ませた。簡単にいってしまえば「玄関をどう取るか」についての悩みであるが、「外の風景と切り離された中庭の生活」を考えていたので、その気分の切り替えに必要な『距離』をどう考えるか?について、きちんとしたイメージや方策が無かったのである。例えて分かりやすく言うならば、こうだろう。安藤忠雄さんの代表作である「住吉の長屋」という住宅がある。コンクリートの無骨な箱があり、その少し凹んだところに玄関扉がある。それを開けるとすぐにリビングである。これはこれで素晴らしい空間装置なのだが、この住宅に関しては、そうした野蛮なダイレクトさではなく、もう少し「スマートであること」を選択しようとしたのだ。うんんんん…「スマートであること」では、言い得ていない。「ダイレクトではあるが適正である」というか……。

検討した結果、バックヤード(フロ、脱衣洗面室、トイレ、クローゼット収納など)の空間は、居住空間の中に「島状の箱」として配置することにした。内部空間の真ん中に置かれたこの箱は、寝室や子供室と、リビングダイニングを仕切る間仕切りの役目も担わせ、一部はキッチンの背面収納や冷蔵庫置場としても利用する。また、この箱の上はロフトとして使えるようにしよう。ここはこどものおもちゃ置場になる。

玄関には、「路地のように筒状の細長い空間」を充てようというアイデアが出た。正確には玄関と玄関収納を合わせた空間であるが、それをひとつの細長い空間として形成し、突き当たることなく通り抜けが出来る空間にしよう。その向こうの自転車置場や駐車場への通路としても使えるのならば便利もいい。昔の土間のような「内部と外部の中間のような」空間を、ということになった。その路地状の通路から(中庭と一体となった)内部空間に、そっと(シフトレバーをチェンジするように/隙間をすり抜けて行けるように/舞台の場面が展開するように)入って行ければ楽しいのではないかと考えた。


平面計画の検討 1/50模型を元に

DIK-fig-07(スタディ模型1/50)
DIK-fig-07(スタディ模型1/50)

最初に直感的につくった1/50のスタディ模型
(分かりやすいよう屋根は外してあります)
手前の部分が「筒状のエントランス空間」。
向こう側が中庭と一体になった内部空間

DIK-fig-08(スタディ模型1/50)
DIK-fig-08(スタディ模型1/50)

(分かりやすいよう北側の塀を外してあります)
左の部分が「筒状のエントランス空間」
内部空間の真ん中にバックヤードを入れ込んだ
「箱」が見える。箱の上はロフトとして使用する。

DIK-fig-09(スタディ模型1/50)
DIK-fig-09(スタディ模型1/50)

(分かりやすいよう北側の塀と屋根を外してあります)


最初の問題『風呂場を何処にするか』

DIK-fig-10
DIK-fig-10

スタディ模型1/50のエントランス部分だけのバリエーション

DIK-fig-11スタディ模型1/50のエントランス部分だけのバリエーション
DIK-fig-11スタディ模型1/50のエントランス部分だけのバリエーション

トップライトをつけて内部の採光を確保するとか、内部の作り方についてもいろいろと考えてみた。

計画の大まかな骨子はクライアントの賛同を得たが、幾つかの点で注文を受けた。

クライアントの頭をもっとも悩ませてしまった問題が「風呂を何処に配置するか」であった。私たちの提案では洗面所と風呂場は居室のなかに置いた『(バックヤードをまとめた)箱』の中に配置するということになっていたが、クライアントのイメージは「庭に面した、明るい風呂場」であった。普通に考えれば当然の話である。わたしたちの最初の提案はそういった未消化な問題がいくつもあった。

この問題に早速取り組んでみると、ところが、そんなに簡単に解決できない問題であることが判明する。普通の方法でもって外部に面した場所に風呂場を実現しようとすると、どうしてもプランのシンプルさが損なわれてしまう。今回のプランの大きな魅力のひとつは、全体が機能によっていくつかの単純な要素に区分けされ、それが単純な形の中にシンプルに納まっていることなのだ。

「筒状のエントランス空間」「庭と一体になった内部空間」「内部空間の中の箱」これがこの住宅のすべてであった。しかし機能が収まっていない以上、あきらめなければならない。このシンプルさを損なってしまうことについてはクライアントも一緒になって心配してくださった。

わたしたちがもうひとつ用意した修正提案は、「(前の段で説明した)エントランスの筒状の空間」の中に風呂場と洗面室を配置するといったものだった。「筒状の空間」とした片側が玄関であり、そこを入るとすぐにドアに突き当たり、そこを抜けると洗面室および風呂場にたどり着く、といった形のものだ。こうなるともう「筒状のエントランス空間」ではなくなってしまうが、他に持ってゆくと一番肝心な「庭と一体になる生活」が揺らいでしまう。どうにも手詰まりの状態での「背に腹は代えられない」式の提案である。


「上手くいかない」悩みを抱えたまま、クライアントに修正提案を説明すると、クライアントにも、わたしたち以上に「筒状のエントランス空間」が崩れてしまうことを大変に残念がっていただいた。

あれこれと苦心し、時間もそれなりに費やし、クライアントにも多大なご協力と心労をおかけした末に、ようやくようやくひとつの案にたどり着いた。

「筒状のエントランス空間」の中に風呂場と脱衣室を設けるが、玄関と風呂場、脱衣室の間は硝子で仕切り、脱衣室を使うときにはカーテンによって視線を遮る、という方法である。これであれば、「エントランス」の通り抜けは諦めることになるが、風呂場の採光と通風は良好である。


「下駄箱や玄関周りの収納」「水周りの収納」をどう作るか

DIK-fig-12(スタディ模型1/50)
DIK-fig-12(スタディ模型1/50)

下駄箱を壁に付けて検討した模型。

DIK-fig-13(スタディ模型1/50)
DIK-fig-13(スタディ模型1/50)

デザインよりも何よりも、この「筒状のエントランス空間」が狭く感じられてしまうことに抵抗があった。
この部分の幅が1200mm。その程度だと、住宅の廊下にしてみればかなり広いが、それでもただの廊下にしか感じられないのではないか、と考えた

「風呂場を何処に配置するか」を検討した際に、「筒状のエントランス空間」を気に入っていただいた手前、この空間をいかに魅力的につくれるかが、大きな課題に浮上した。一番の問題は収納にまつわる問題である。玄関や洗面所まわりには、靴、傘をはじめ雑多な物が発生する。これらを片付けるに必要な収納をこの近辺に確保しなければならない。また、この空間には洗濯機が置かれることになるが、それがきちんと片付いて見えるためには、その周囲の小物がきちんと収納できなければならない。

 先ずは「筒状のエントランス空間」の片側の壁面に、下駄箱を取り付けてみる方法で検討したが、どうやっても下駄箱にしか見えず、ベストな方法とは思えなかった。

次に、ゆったりとした箱状のベンチを空間に設置し、その中を靴箱として使うという方法を考えた。空間の見栄えとしてはなかなか良くなりそうだったが、収納量としては不足がありそうな気がした。

結局たどり着いたのが、壁の厚みの中に収納を入れ込んでしまおう、という方法だった。

この建物では、全体をすっきり見せるために柱を壁の中に隠してしまうという方針でいた。この頃にはすでに「主構造は鉄骨造で」という方針がクライアントとのあいだで固まってきており、その柱を隠すために壁の厚さが30cm少々の厚みになってしまう。そのスキマを収納に利用しよう、ということで落ち着いた。収納内部の奥行きは実際に確保できる寸法で20cm少々。この中に靴や傘と様々な雑物を収納する(コート掛けはここに設置しないことになった)。問題は靴である。大人用の靴は大きいものでは30cmを超える。ネットで調べると様々なグッズが売られており、想定される収納量はどうにかクリアできそうだった。現在はL字型に組み立てた棚板を用いて斜めに靴を収納する方式をとっている。


ロフトの天井高さと建物のかたち、ロフトの使い方の話

DIK-fig-14(スタディ模型1/50)
DIK-fig-14(スタディ模型1/50)

上に乗っかる「屋根」が意に反して分厚くなってしまった

ある回の打合せでクライアントからはっきりと「ダメだし」をいただいたことがある。

初期の提案の際にクライアントにお見せして気に入っていただいた「模型」には詰めが甘い部分があり、全体の寸法をきちんと調整しなおした結果、かたちが微妙に変わってしまうことがある。

この回の打合せの前に、屋根の形に変更が必要なことが判明した。当初の案では、箱の上にうすい屋根をそっとのっけたイメージだったが、その屋根がかなり分厚くなってしまうのである。屋根をうすく保とうとすれば、ロフトの天井高さが低くなってしまう。使い勝手上、わたしたちが勝手に屋根を分厚くした模型を作ってお見せしたのである。このときにははっきりと「ダメ」をいただいた。


DIK-fig-15(スタディ模型1/50)
DIK-fig-15(スタディ模型1/50)

頭デッカチでバランスが悪く、ぼってりした感じになってしまった。

ロフトの使い方を検討し、体に寸法を当てていただいて、高さの感覚を確認し、その寸法を模型や図面に反映して、ようやくOKをいただいた。


子供部屋と寝室のあいだ。仕切るべきか、仕切らざるべきか

DIK-fig-16(スタディ模型1/30の一部)
DIK-fig-16(スタディ模型1/30の一部)

手前が寝室、向こう側が子供室

家族間のプライバシーをどの程度重視するか、についての考え方はそれぞれの家族で違ってくる。今回の計画では、お子さんがひとりということもあり、小学校を卒業するまでの期間は個室を与えず中学校高校の期間にのみ子供部屋を個室にしようとうことに話がまとまった。そのあとは基本的に自立させ一人暮らしをさせるという方針である。旦那さんが一番心配しておられたのが、こどもの思春期には一体どういった生活になるだろうか、といった点である。その時期のこどもの立場を考えれば、個室も必要かもしれないが、基本的には全体を広くゆったりと使いたいし、個室など構えずに行き止まりの無い部屋の中で過ごしたい。思春期に一時的に個室化するといっても、どの程度の個室化が必要なのか、視線だけをさえぎれば良いのか、遮音はどの程度考慮するべきか。ずいぶんと悩ませてしまったようであった。

この件については、実施設計が終了した後、再度、わたしたちの方からお話をさせていただき、将来、壁でも襖でも取り付けやすいように、鴨居(スティール製の)だけでも付けておきましょうか、とか、取り外し式の鴨居を作っておく、とか、幾つかの案を出した。わたしたちとしては、将来の「微改築」の際に綺麗に仕上がるか、またその後夫婦二人だけの生活になったときに速やかに復旧が出来るかが心配だったのである。最終的には、いざとなったとき既存の壁を壊さずに済むように「鴨居取り付け用のプレート」を壁に出しておくことで話がまとまった


構造はどんな方法を採用するか

この近辺は昔から地盤が良いことで知られ、地盤調査の結果でも表層こそ弱いが2mも掘ればかなり良い地盤になることが分かったので、構造形式の選択は自由であった。基本計画がまとまりはじめた時点から、主構造は、鉄骨造か木造だと見当をつけ、クライアントと一緒に話し合ってきた。

鉄骨造のメリットは、この住宅の居住空間の中に柱を見せずに実現できる点であり、木造だとそれは不可能だ。逆に木造のメリットは、何と言ってもコストである。

結果的にはクライアントにコスト上の心配を掛けながら、鉄骨造で計画を進めることになった。


デザインの基本計画、組み立て

デザインの大きな方針については、いつの時点からか、はっきりと私たちのイメージの中にあった。

「各空間を移動する際の場面転換の楽しさ」
「ぐっと締めることと、ぱっと開くこと、の切り替わることの楽しさ」

それを今回の計画に当てはめると、こうなる。

  1. 外から帰ると、古い住宅地の中に「白くて低い建物が」建っている。壁にはただひとつ口が開いており、
  2. その中は黒く引き締まった空間になっている(筒状のエントランス空間)。中は、一番向こうに上から光が差し込み、小さな箱庭に植物が植えられている(風呂前の坪庭)。その中に入ると、右手に引き戸が見える。
  3. 引き戸をあけると開けると広い空間が広がっている。南北の大きな窓に面しては、燦燦と光が降り注ぎ、植物が茂っている(庭と一体になった室内空間)。

[1]のシーンから[2]のシーンへの移動は、白から黒への場面転換であり、グッと引き締まった感じを演出する。[2]のシーンから[3]のシーンへは引き締まった場面から、明るい空間へふわっと転換するように考えている。その緊張と弛緩をへて、「家にたどり着く」という行為を作り出そうと考えている。


実施設計~見積調整段階での検討

DIK-fig-17(スタディ模型1/30)
DIK-fig-17(スタディ模型1/30)

外観(いじりすぎて模型がかなり汚くなってしまいました)

DIK-fig-18(スタディ模型1/30)
DIK-fig-18(スタディ模型1/30)

エントランス部分の詳細な検討 1/20部分模型にて

DIK-fig-19(エントランス部スタディ模型1/20)
DIK-fig-19(エントランス部スタディ模型1/20)
DIK-fig-20(エントランス部スタディ模型1/20)
DIK-fig-20
(エントランス部スタディ模型1/20)
DIK-fig-21(エントランス部スタディ模型1/20)
DIK-fig-21(エントランス部スタディ模型1/20)

この空間の一番奥の庭(風呂場の前庭)は「大割栗石と植物の組み合わせによる庭」を考えています。

(同業者はみんなそうであろうが)詳細な図面を描き始めると、それまでさして気にしていなかった部分が猛烈に気になり始める。例えば、「筒状のエントランス空間」の壁面収納の扉のサイズや割り付け、各部の素材の配置、壁や天井は扉にあわせて目地をいれるべきか、或いは別物と押して作るべきか。脱衣室と玄関の間のカーテンは普段はきちんと仕舞われているべきではないか。浴室内に掛けられるタオルは普段はどう見えるのか。壁の艶はどの程度出すべきか。そういったことが検討対象となる。

このエントランスは、扉の割り付けを均等にして(880mmピッチ)リズムを作り、床の段差もそれに揃え、天井にもそれに揃えた目地を入れることにした。この空間は基本的に「(漆塗りを理想とした)艶のある黒」で仕上げたいと考えているので、目地などを全く消してしまうとあまりにも抽象的になり過ぎないか、と心配した結果である。床の仕上についても、塩ビタイルのような無機的な素材も最後まで候補に残ったが、最終的に選択したのは玄昌石である。

この空間でイメージしている「黒」は、残酷な感じのする(艶を抑えた)黒色ではなく、もっと豊かな匂いたつような、漆塗りを理想とした、差し込んでくる光や植物の鮮明な緑を際立たせて反射する「黒色」なのだ。


キッチン周りの詳細な検討 1/20部分模型にて

DIK-fig-22(キッチンと前庭の部分スタディ模型1/20):全体
DIK-fig-22(キッチンと前庭の部分スタディ模型1/20):全体
DIK-fig-23(キッチンと前庭の部分スタディ模型1/20)
DIK-fig-23(キッチンと前庭の部分スタディ模型1/20)

南北の庭をどうデザインするかが今後の大きな課題。

キッチンまわりをどう作るか、についても頭を悩ませた。一番の悩みは、庭に面したキッチン正面を硝子で仕上げたいがために、レンジフードをどう取り付けるかであった。レンジフードの前だけを壁にするのが一番手っ取り早い方法であったが、どうにも上手くない。次いで、アイランド用のレンジフードも候補に上がり、吊ボルトによってレンジフードを天井から吊り下げる方法も検討したが、どうもこの建物にはあっさりしすぎて合わないような気がする。最終的に選択したのは、鉄骨の小柱(H鋼の125×60)を1本設け、そこにレンジフードを取り付ける方法である。

クライアントと相談した結果、キッチン作業台の天板は大理石貼りとし、それが庭に続いて感じるように感じるように、庭の床も一部石張りとした。まるで、前庭も含めた大きな机を手に入れたように感じてもらうためである。


割栗石

建物の周囲をどう作るかは、外観デザインの構成にとって以外に(?)重要なウェイトを占める。今回は建物周囲の外構に割栗石を提案させていただいた。割栗石とは5cm~10cm程度の大型の砕石である。この荒々しい様はクライアントにも一目で気に入っていただいた。この建物は白く艶のある外観になる予定なので、その対比として、荒々しい素材を選択したつもりである。また、こうしたエレメントは周囲の景観とこの建物を違和感なく繋ぐ役割もすると考えた

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