仮称)風をつなぐヴィラ/福祉施設 中庭植栽工事

『中庭の植栽工事について,「樹木の立て込み」を行うので立ち会って確認してほしい』との話があり,本日現場に行ってきました。

「立て込み」とは,中高木を配置するにあたって仮に樹木を置き,置く場所や向き,傾きなどをチェックする工程のことです。

玄関を入ったところの景色。この先に大きなガラスの引戸があり,そこをくぐって中庭に入ります。

ほぼ,おおまかな中庭の造形が出来上がっていました。

中庭をぐるっとまわって,いろいろな角度から眺めてみますと…。

生活介護室訓練室からはこんな風に庭が見えます。

少し角度を変えて見ると…,

うーん,かなりダイナミックに中庭の景色が展開されています。

まだできていませんが,この背中側にも違った景色が展開することになっています。

医療型短期入所の宿泊室からも,こんな風に眺めが展開しています。

それぞれの部屋に区切ったり,つなげたりして見守りとプライバシーの両立を図った施設ですが,

それぞれの部屋からも中庭の景観が楽しめます。

一緒に回っていたクライアントがぼそりと,「星野リゾートみたいになってしまったなあ」と,苦笑されていました。

南風除室から中庭を眺めたところもこんな感じです。

各所に設置した「こういう空間(風除室)」を経由して,別の風景の中に身を投じます。

さらにぐるりと回って…

こんな風に,野山を再現したように高低差をつけて木を配置しています。

そうしたちょっとしたことが「自然さ」を生んでいるように思いました。

違う角度から見ると…

結構ダイナミックな風景ですよね…。

写真の右端に少しだけ映っていますが,ブリッジ状のウッドデッキが設けられます。

福祉施設の中でのちょっとした移動の中に,季節感や空間の変化などがドラマチックに展開されるような空間構成です。

『山採り』による自然な樹々

こうした樹々は,造園屋さんが借りた野山から採取してきたものです。『山採り』っていうんですって。造園の親方が,契約した山を歩きながら,「お~,この枝ぶり,かっこいい!!」とピンときたものを,採ってくるそうです。

私たちも一度,一緒に行ってきましたが,本当に面白かったです…。

同じ株立ちのものでも,人工的に栽培したものと野山から形の良いものを採取してきたものでは,ぜんぜん趣が違います。

ぐるりとまわっていると,ちょうど,最後の一本を,吊り上げているところでした。

こうして,吊り上げて土も樹木も搬入しています。

搬入した樹木は,こうして職人さんによって植え付けられます。こうしている間にも親方が建物の内外をぐるぐる歩き回り,「もう少し右」だの,「15度回せ」だのうるさく言っています。

でも見ているだけでも楽しいです。

地下支柱

ちょうど,彼らのスペシャルな技量を発揮しているところに出くわしました。

地中支柱といって,支柱を地上に出さない技術です。

こういう高度な技術を持っている造園屋さんはそんなにいません!

実はこのケヤキはたかさ8mの大木です。こんなのを山から取ってきて植えることなんてありません…。造園屋さんの親方も『「大きすぎるかなあ」と心配だったけど,案外大丈夫だ』って言ってました!

ただ,これくらい大きなものは二度と植えられないので,これについては「枯れ保証」の対象外,ということにさせていただきました…。

「枯れ保証」とは…

通常の管理(水やり等)を行っているにも関わらず樹木の生育が悪くなり、枯れてしまった樹木を、無償で取り替えをするというものです。枯れ保証の期間は,通常「植込み後1年間」です。

生命力の象徴のように,この施設の真ん中に強く優しく立っていてほしいと思っています。

こんな風に,前面から見ても中庭の木々が屋根を飛び出して見えるように,と考えながら設計をずっと調整してきました。この生命力こそ,この施設「風をつなぎ森をめぐるヴィラ」の象徴です。

建築家によってそれぞれ考え方があると思いますが…,

出来た後に「当たり前」に見えるような工夫こそが私たちの仕事の醍醐味です。「格好よくデザインしたように見える」のは,実は恰好よくありません…。

「中庭の樹々がすごく元気そうで素敵だなあ。建築よりもこの中庭の樹々が素晴らしい!」

「良い木を造園屋さんが山から採って来たんだから,中庭の樹々が素晴らしいのは当然だよね」

「造園屋さんのウデも良いかもしれないけど,何より樹々が素晴らしいからなあ…」って,

そう見えるのが我々の理想です。そう見えるように建築や空間を調整しています。

なーんてねっ!

施設の前面はガラス面を多用し,かなり透明感を保ったつくりとしており,中庭が透けて見えます!これはクライアントの発案で,打合せ中に模型を眺めていて何か思いついたように急に「この透明感がすごく大事なんじゃないか」と言い出して,私も「なるほど」と思い何とか実現させました。木造在来工法でここまで透明感を出すのは,実は,結構大変なんです。

この日もクライアントとこの眺めを眺めていて,「クレーンが邪魔で中庭の透明感が確認できない…」と呟いていましたが,「明日にはクレーンはいなくなるようですよ」というと,「明日も来ようかなあ」と言っていました。うーん,私も見たいです。

ちょ~楽しみです!

「仮称)風をつなぎ,森をめぐるヴィラ」見学会

「日時:2023年3月18日土曜日 10時~17時」に見学会をやることになりました。

是非,お越しください!

「森のヴィラ」見学会の情報は,こちら

「福祉施設なんて関係ない」って思っている方にも,大いに勉強になると思います。ぜひお出で下さい!

T島

森をめぐるヴィラのルーツ

社福)あいの実本部施設

中庭と言えば…

https://www.uapp.jp/works/191
囲い庭に埋もれる平屋

また見学会やります…

山神の住宅 ちっちゃい見学会報告

森をめぐるヴィラって,なに?

ちと小難しい,ヴィラの建築的説明です

これも中庭ですね…

https://www.uapp.jp/works/558
町に露出する中庭

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